地政学ー⑤ 今「団結力」が問われているEUを地政学的視点から分析してみる

地政学ー⑤ 今「団結力」が問われているEUを地政学的視点から分析してみる
2021年1月1日 PLUES
In ニュース, 政治

今回はEUです。世界でも有数の経済大国を要する連合ですが、コロナ情勢やアメリカの対応によって様々な問題が浮き彫りになっています。

今回はEUについて地政学的観点から分析してみたいと思います。

ヨーロッパの歴史を紐解く

ヨーロッパは、過去数多くの戦争や争いを繰り返し、今諸国を中心に団結を試みています。

過去歴史を振り返ると、フランス革命を発端としたヨーロッパ全域を巻き込む戦争、そして植民地を求めてアジアやアフリカに進出し、パクス・ブリタニカと呼ばれる、世界の工場とまで呼ばれたイギリス帝国の最盛期である19世紀半ばごろから20世紀初頭までの時代が続きます。

その後WW1、WW2となりますが、この戦争によって多くの禍根を残すことになります。

そんなヨーロッパを、戦争を見ながら振り返ります。

ヨーロッパの戦争の歴史

ヨーロッパの戦争で大きな契機になったのは「第一次世界大戦」と「第2次世界大戦」です。

■第一次世界大戦

WW1では、1914年に起こったサラエボ事件を契機に世界中を巻き込んだ戦争への発展。サラエボ事件は1914年6月28日、オーストリア=ハンガリー二重帝国の皇太子フランツ・フェルディナント大公と妻のゾフィーが、ボスニアの州都サラエボの病院を訪問する途中に19歳のボスニア系セルビア人で国家主義者の青年に銃撃されるという事件です。二人ともこの日に亡くなっています。

WW1ではイギリス、フランス、ロシアを主軸とした連合国と、ドイツ、オーストリア=ハンガリー二重帝国、ブルガリアなどの同盟国との陣営に分かれることになります。日本は日英同盟もあった為、連合国側につきます。同盟国側はこれに敗北し、ベルサイユ条約を締結することになります。

このWW1終了後のベルサイユ体制が大きな歪みを生むきっかけになります。それは条約内容にあります。ドイツはこれによって多額の賠償金を負わされることになり、軍備の縮小や植民地の放棄など、連合国からの対独報復政策は徹底していました。これがWW2でファシズムを台頭させた原因とも言われています。イギリスの経済学者ジョン・メイナード・ケインズが、敗戦国で今や何の力もないに等しいドイツへの賠償金に求めようとしたベルサイユ条約の内容に強く反対しています。この様は、時に政治家の戯画も交えながら過激な調子で綴られています。過酷で半ば非現実的な賠償金はナチスやユダヤ人虐殺をうむことにもなったのではないでしょうか。

同時に同盟国側についていたオスマン帝国も解体されます。この際、イギリスが行った3枚舌外交によって、今にも残るパレスチナ中東問題が誕生してしまいます。これは例えばパレスチナという土地に住んでいたアラブ人の場所に、戦勝国のイギリスが決めたユダヤ人をパレスチナに入植させる政策を取ったことで、両人種間に軋轢が生まれ、対立を生みます。また、グルド人の居住区を戦勝国が勝手に分断し、同じ人種なのに異なる国に統治されてしまうという悲劇を生みます。今の朝鮮半島のようなものでしょうか。

根深い負の連鎖は、今なお色濃く残っています。この原因としては、ヨーロッパ諸国が民族無視でアラブ社会を分断し、制御せずに責任放棄したことが今の流れにつながると言っていいかもしれません。

■第二次世界大戦

WW2のきっかけの一つは、1929年に世界恐慌です。恐慌が発生し、各国がブロック経済、関税の引き上げや輸入制限を行い、経済が疲弊していきます。失業者を多く生む事態に陥った諸国の中で、ドイツはヒトラーが今回の恐慌の煽りを受けて経済が疲弊した原因にベルサイユ条約の批准したこと、ユダヤ人のせいと民衆を煽り、台頭していきます。今のポピュリズムの流れと非常に似通っていますね。

これによって全体主義的な国家運営を行い、公共事業などを行って失業者を減らしていきます。しかし同時に隣国のポーランドやスロバキアを併合していき、領土を拡大していきます。

しかしイギリスやアメリカなどの連合国が勝利することになり、ドイツやイタリアなどのファシズム勢力は降伏することになります。

WW2後の東西冷戦と、NATOやEUの成立

世界的な戦争は終結します。その後はイデオロギー対立していくアメリカや西欧とソ連諸国に分割されます。

ソ連共産圏を封じ込める施策として、西欧諸国は北大西洋条約機構NATOを結成し、軍事同盟を結びます。
これにはアメリカの参加が大きく影響して力を強めたと言われています。

その後ヨーロッパ支援政策=マーシャルプランによって経済復興していき、欧米の結びつきはさらに強まることになります。
しかし、NATOの存在意義は、ソ連の崩壊によって薄れることになりましたが、今に至るまでなくなる事はありませんでした。
なぜならソ連への対抗から、世界的な紛争解決にNATOが一役買うようになったからです。

しかしソ連はロシアになったからといっても、社会主義国家で中国との結びつきが強いロシアは、今尚西欧にとっては懸念材料となっているといっていい状態と言えます。

ギリシャ問題はEUにとって重要

皆さんギリシャ危機は覚えていますでしょうか?これは2009年10月の新民主主義党(穏健派・中道右派)から全ギリシャ社会主義運動(左派)への政権交代を機に、旧政権により財政赤字が隠蔽されていたことが明らかになり、緊縮策を迫られて国民生活や国の存立が危ぶまれた危機です。

しかし、EUはギリシャを見捨てませんでした。それはなぜかというと、「安全保障」の上で、ギリシャを手放すことは共産圏の進出を許しかねないという状況が考えられるからです。つまり地政学上ということです。EUからの緊縮財政政策を受け入れる形になるギリシャですが、国家財政は改善されますが、失業率が上がるという事態に。この隙を狙ってロシアや中国などの共産圏が忍び寄っています。EUなどの外国からの投資が低迷するなか、「一帯一路」でギリシャを重視する中国の圧倒的な資金力にあらがえなくなっているのが現実です。

ブレクジット

イギリスの欧州連合(EU)離脱が2020年12月31日深夜に完了し、イギリスにとって新しい時代が始まりました。

イギリスは31日午後11時(日本時間1月1日午前8時)をもってEU規則に従うのをやめ、移動や貿易、移民や安全保障の協力関係などに関するEUとの新しい協定が施行されます。2016年6月の国民投票で52%がEU離脱を支持したことを機に始まった離脱プロセスが、1年間の移行期間を経て、これで完了しました。

EUに参加するメリットより自国の経済を守ることに注力したイギリスはこれからどこに向かうのでしょうか。

以上がEUに関するお話でした。2021年にコロナがどう広がるのか、押さえられるのか、その後のEUはどのような社会になっていき、共産圏はどれほど侵入するのか、まだまだ課題が山積するEUに今後も注目が必要です。

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