コロナによる封鎖の緩和に伴い、レバノンで抗議行動参加者による暴動が再開される

コロナによる封鎖の緩和に伴い、レバノンで抗議行動参加者による暴動が再開される
2020年5月3日 PLUES
In ニュース, 政治

コロナウイルスの封鎖が緩和されるにつれ、デモ参加者は内戦以来のこの国の最悪の経済危機に対応しています。

瀬戸際のレバノン

レバノンではコロナウイルスの封鎖を緩和し始める方針に切り替えています。それに伴い反政府抗議者はデモを再開。昨年の秋のデモは音楽とダンスが特徴でしたが、今年以降はコロナウィルスによる経済的大災害に見舞われ、抗議行動は暴力的になりました。

※レバノンでは2月21日に初の新型コロナ感染者が判明して以来、4月28日時点の感染者は累計717人、うち死者は24人となった。前日比では感染者は7人増、死者は出ておらず比較的感染拡大は落ち着きを見せている。レバノン政府は経済活動の再開を想定し、以下のとおり、4月27日から6月8日にかけて段階的に企業などの活動を再開する方針を決定。

2020年4月28日、レバノン各地でレバノン・ポンド(LP)の対アメリカ・ドル相場の急落=消費者物価は昨年10月以来50%も上昇してインフレーションが発生したことにより、生活不安に陥った住民らの抗議行動が発生し、一部が金融機関への襲撃や治安部隊との衝突に発展しています。国中の抗議者たちは街の銀行に発砲し、高速道路を閉鎖し、兵士と衝突したようです。軍がデモの群集を分散させるために実弾、ゴム弾、催涙ガスを使用した後、数十人が負傷しました。少なくとも1人が死亡したと報告されており、54人の兵士も負傷している模様です。

レバノンでは、2019年10月,増税措置等への反対を契機とする大規模な反政府デモがベイルートなどのレバノン各地で発生。抗議内容は次第に増税反対から現在の政治体制への抗議や汚職の根絶等を要求する内容に変化し,デモ参加者たちは「テクノクラート内閣」の樹立を要求。こうした中,同年10月29日,ハリーリ首相が辞任を表明。同年12月19日,アウン大統領はハッサン・ディアブ元教育相に組閣を指示し,2020年1月21日にディアブ新内閣が成立。しかしオブザーバーの意見では、長年にわたる経済の不始末を監督した官僚・エリートとの関係が今も依然としてあり、今回のコロナウイルスでさらに状況は悪化していると指摘。レバノンは1990年の内戦終結以来最大の経済危機に直面しています。

ヨーロッパのSBSニュースによると、抗議者が通りに戻ってる背景には、レバノンに住む女性を中心に基本的な衛生製品の購入に苦労しているとことです。政府が緊急の経済的支援を求めるため、抗議者は男女問わず様々な問題を引き起こしています。

レバノンの基本データ

国土面積は10,452平方キロメートル(岐阜県程度)
人口はおよそ約610万人。言語はアラビア語(仏語及び英語が通用)。宗教はキリスト教とイスラム教。政治体制は「共和制」。共和制は国民が選んだ国の代表によって統治される国家体制のことです。もっと平たくいうと国王や天皇がいない国のこと。
元首はミシェル・アウン大統領(2016年10月就任)。首相はハッサン・ディアブ氏。余談ですが、レバノンの首相は慣習としてイスラムの2大宗派の一つ、スンナ派の議員から選出され、大統領は憲法上の規定はないが、キリスト教の一派であるマロン派の人物が就任することが暗黙の了解となっているようです。

レバノンがフォーカスされたのは、日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告(65)が日本を出国し、中東レバノンに入ったことが31日、分かった。元会長は保釈条件で海外渡航が禁じられており、無断出国とみられる。日本とレバノンの間に犯罪人引き渡し条約はなく、4月にも始まる見込みだった元会長の刑事裁判は事実上、困難になったことが目新しいです。

国民の不安な感情と共に、さらに政治内でも、中東のレバノンを財政危機に追い込んだ同国の政治家らが、責任の所在を巡って言い争い、歴史的に続く宗派勢力間の反目をさらにかき立てる結果になっているようです。

LPの急落

レバノンポンドは1997年以降、1ドル=1507.50ポンドで固定されていますが、複数為替相場制度への転換を余儀なくされており、昨年の夏以降、レバノンポンドはその価値の50%を失い、レバノン市民の賃金と貯蓄を半減させました。ガーディアン紙によると、食糧価格は67%も急騰しており、レバノン政府は人口の4分の3が支援を必要としていると推定しています。

LPが下落する理由はレバノンの対外債務累積の問題で、これも悪化の一方でした。債務の問題が行き詰まるたびに国際会議が招集されたが、いずれも一時的な資金の注入の話はしてもそもそもの債務を減らす、というところまでは踏み込んでおらず、その結果、2019年秋にはLPが1ドル=2000LP以上にまで暴落する結果に。借金を補ってきた経済成長も、2011年から始まった隣国のシリア内戦や近年の原油安による湾岸経済の低迷などで失速し、歳入の半分を利払いに費やす状態に陥った。18年の経済成長率は0.2%だった。政治の怠慢と経済成長の道筋が立てられない暗中模索な状態が続いています。

レバノン政府は財政再建も債務の支払いもできないまま迷走することとなり、2020年3月7日、レバノン政府はついに債務の不履行を宣言するに至っています。

レバノンではイラン革命防衛隊との関係が深いイスラム教シーア派政党ヒズボラが政権に参画していることで、欧米などから支援も受けにくい。ヒズボラは国際通貨基金(IMF)への支援要請に反対の立場だ。ヒズボラは、レバノンにおけるシーア派主導のイスラム国家樹立及びイスラエルの滅亡を目的とし、今はレバノン国民議会での議席獲得を通じた合法活動の拡大している活動をしている。攻撃対象は、シーア派と対立する国内のキリスト教など各派,国内外のイスラエル権益などです。
「ヒズボラ」は,1982年頃の結成以降,イスラエルや欧米の権益に対するテロを実行してきており、1980年代には,国連レバノン暫定軍(UNIFIL)の米・フランス軍司令部爆破事件,在レバノン米国大使館爆破事件,トランス・ワールド航空機乗っ取り事件などを引き起こした。また,1990年代には,レバノン南部のイスラエル軍治安警戒地域での同国軍車列に対する自爆テロ事件を実行したほか,在アルゼンチン・イスラエル大使館爆破事件やユダヤ文化センター爆破事件にも関与したとされています。

今後の対策

ロイター通信によると、政府は4月30日にも、経済救済計画を完成させようとしている。これが国際通貨基金(IMF)の関与につながること可能性は高いとされています。IMFによる支援は、厳しい条件が付けられるにもかかわらず、同国が実質的な財政支援を頼れる唯一の資金源と多くから見なされているからです。

計画は巨額の財政赤字の解決策を描くことになる。この中には、銀行部門で見込まれる830億ドル(約8兆9000億円)の資金不足問題が含まれる。レバノン経済は急速に縮小しているだけに、この額は早晩、同国経済の2倍の規模に匹敵することになる。これをどう分担するかが今後の最大の問題のひとつだ。

参照: FOREIN POLICY