インドの首都ニューデリーで、新しい市民権法をめぐる賛成派と反対派の衝突が激化し、27日までに警察官1人を含む少なくとも25人が死亡、150人が負傷して病院に運ばれました。
暴動は24日、インド訪問中の米国のトランプ大統領が到着する数時間前にイーストデリー地区で発生し、27日に入っても続いているようです。
石を投げたり車やガソリンスタンドに放火したりするデモ隊に対し、警察は催涙弾を使用。医療関係者によると、病院に運ばれた150人のうち、50人は銃器による負傷だった。死亡した警官も頭に銃弾を浴びていたそうです。
暴動を引き起こす原因となった新法は、近隣3カ国からの亡命を希望する人に対し、イスラム教徒でないことを条件として、市民権を与える内容で、反対派は、個人の信教に基づいて市民権を付与する措置は憲法違反に当たるとして反発しています。
一方、ヒンドゥー系の与党インド人民党(BJP)率いる政府は、祖国で迫害された宗教的少数者を守るための法律と位置付けています。
野党側は、首都の秩序に直接責任を負う内務大臣アミット・シャー氏の辞任を求めています。
インドで市民権法の改正とは?
市民権法の改正は12月9日に下院で可決され、上院では与党インド人民党(BJP)は過半数を持たないが、11日に可決されています。
現行法は不法入国者とその子供たちが市民になることを禁じていますが、改正法では、パキスタン、バングラデシュ、アフガニスタンの近隣3国から2014 年までに不法に入国した難民(数百万人と言われる)に市民権を与えます。しかし、ヒンドゥー教徒、シーク教徒、仏教徒、ジャイナ教徒、ゾロアスター教徒が対象で、イスラム教徒には適用されない。それで、イスラム教徒を不当に差別するものではないかとの強い批判、反発が出ています。インド政府は抗議運動に対し、集会禁止、インターネットの閉鎖などの強権的手段で抑え込もうとしています。
インドで最も人口の多い北部ウッタル・プラデシュ州でも、市民権取得の資格がある人の認定が始っており、同州政府トップのシュリカント・シャルマ氏(インド人民党、BPJ)は記者団に対し、これまでに州内80地区中21地区の約3万2000人について、市民権取得の資格を認定したと述べています。
市民権の要件に宗教が持ち込まれたのは初めてのことだということで、既に最高裁判所に訴えが出ている。1月には審理が始まっているとされていますが、最高裁判所が憲法に違反するもとしてこの改正を斥けることが好ましい結果だと思われます。憲法14条は「国はインドの領域において何人に対しても法の前の平等と法による平等な保護を否定してはならない」と規定しています。
イスラム排斥の背景には、ヒンドゥー民族主義のBPJが過半数を占めるインド政権の影響が強く、インドはヒンドゥー教徒79.8%,イスラム教徒14.2%,キリスト教徒2.3%,シク教徒1.7%,仏教徒0.7%,ジャイナ教徒0.4%(2011年国勢調査)ですが、インド国内の2億人以上のイスラム教徒を追いやろうとする「ヒンドゥー民族主義」の一環だとの非難が上がっています。
インド生まれで、マイクロソフト最高経営責任者(CEO)のサティア・ナデラ氏は、「あそこ(インド)で育ったといえる者として、(インド国内で)起きていることは残念だと思う。(中略)単純に悪い状況だと思う」として公式声明を出すなど、モディへの反発も根強いです。
参照:https://www.aljazeera.com/news/2020/02/modi-slammed-death-toll-delhi-violence-rises-200226192504695.html