中国による世界の覇権を取ろうとする政治・経済的な動きはより顕著になってきました。米中貿易戦争やサイバー上の戦いなど、どちらもお互いに譲歩するような気配はありません。
2019年12月13日に発表された米中貿易協議「第1段階」合意では、中国側による全面的な譲歩の結果が見て取れましたが、長期的な目線で見ると、どちらが勝つかと問われれば「中国」が強いと考えています。
理由は以下2点です。
①優秀な人材の数が違う
今は世界人口の5人に1人が中国人と言われています。2018年1月に中国国家統計局が発表したデータでは、2018年は人口が13億9500万人に増加し、出生数は1523万人という結果です。2018年、アメリカで生まれた新生児は378万8000人と前の年より2%減っています。およそ年間1,000万人近くの差があり、その人口差はより拡大していくことでしょう。
因みに日本は、2018年には日本人は91.8万人で、10年前に比べて20万人程度少ないです。
歴史的に見ると、中国の人口は常に世界最大級の規模を維持し、周辺世界との人口の流出・流入の比率が少なく、また人口増加と人口崩壊が周期的におとずれた、など興味深い特徴が見られています(参照:中国の人口の歴史)。
この圧倒的な人口を抱える中国において、国民一人一人が皆ある一定以上、今の日本の水準や環境で教育を受けたとすれば、その中からどれほど優秀な人が登場してくることでしょうか。つまり社会をリードする優秀な人材が生まれる確率の高さがアメリカや日本よりも出生数や人口数で考えると高いと言えます。
②長期的なビジョンを持っているかどうか
2020年再選を果たすかどうか?ウクライナ疑惑の渦中にあるトランプ大統領は、大統領として任期を全うできるかどうか注目を集める中、中国の習近平は今現在中国の元首の座に、自分が下りるか死ぬまで在籍し続けることが可能です。
2018年に中国の元首である国家主席の任期に関して、最長でも2期10年までとしてきた制限を全て撤廃する方向が固まっています。その年の3月5日に開催された全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で現行憲法の関連規定を改正しています。
権力集中を進めてきた習近平国家主席は、5年後の2023年以降もトップの椅子に座り続ける可能性が強まり、そればかりか、終身の主席をめざしているとの見方まで出ています。
民主政治とは完全に逆行していて、あまりにも露骨で強権的な手法には危うさを感じる中、習近平の中国ナンバーワンになる為の並並ならぬ執念を感じさせます。
過去このような独裁体制に対し、独裁者毛沢東が1966年に発動した文化大革命では多大な犠牲者が出た経緯もあり、一部反発もあります。その反省に立ち次の最高指導者、鄧小平が打ち出したのが元首の任期制限でしたが、習氏はそれをいとも簡単に破りました。
自分の再選を目論むトランプと、中国最強を目指す習近平
中国は既に世界第2位の経済大国で、中国から欧州、アフリカまで陸と海でつなぐ新シルクロード経済圏構想(一帯一路)を通じて、国際的な影響力も強まりつつあります。
限られた任期の中で自分の名声と地位の保全を考えなければいけないトランプと、独裁体制を確立して覇権国家として進む為の施策をバンバン打ち出す中国の、このスピード感は今後5年10年で一気に差が出るかもしれません。
偉大とされる政治家や実業家には、長期的なビジョンが欠かせないとされていますが、今回の両リーダーの行動理念や取り組み比較すると、トランプのウクライナ問題は自分が大統領再選の為にウクライナ大統領に持ちかけた話が広がったことを踏まえると、その見通しの違いは明らかです。
毛沢東の失敗を教訓に世界を獲る
日本ではあまり報道されない中国の人口と政治。過去毛沢東政権で失敗した独裁体制と共産主義、代わりに世界を取った資本主義と民主主義ですが、習近平は独裁体制を敷きつつ、資本主義を武器に世界制覇を目論みます。国家が国営・国有企業などを通じて市場に積極的に介入して経済発展を目指す「国家資本主義」はどうなるのか?