地政学ー② 中華思想を持つ独裁国家中国を分析してみる

地政学ー② 中華思想を持つ独裁国家中国を分析してみる
2020年10月4日 PLUES
In 政治

前回日本が海洋国家「シーパワー」というお話をしましたが、今度は世界に目を向けてみましょう。

中華思想に基づく国づくりと変遷

今回は中国です。自分たちが世界の中心であるという意味から名付けられている「中華」という名前に沿うように、中国はその力を諸外国に見せ付け、強大な力を手に入れて侵略を繰り返しています。

中国大陸は「漢民族」が支配し続けている歴史的経緯があります。
なぜこのような思想に至ったかは定かではありませんが、異民族と比べて自分たちがはるかに優れていると考えており、今の「中華思想=中国が世界の文化、政治の中心であり。他に優越している」という考えが残っています。この中華思想は周辺の異民族に対して上下関係を徹底し、朝貢体制を築きました。

朝貢貿易は、中国の王朝に対する周辺諸国の貢物の献上と、それに対する皇帝からの下賜という形態をとる一種の貿易のことで、漢・三国時代・唐で盛んに行われ、宋・元・明・清でも継承されています。朝貢貿易を行った国は、中国を世界の中心として認め崇めていました。朝貢貿易を行った国は当時のミャンマーやタイ、ベトナムなど、中国と隣接したいわゆる「内陸部」です。

しかしその体制も弱体化し、1900年代に入ると西欧日による植民地時代、日清戦争、辛亥革命、WW2などを経て今の形となります。

この歴史的経緯から、今の中国は「内陸ではなく、海に打って出る」ことをはっきりと意識しています。

「海を制したものが世界を制す」

過去、アメリカやイギリス、スペイン、そして日本が力をつけたのは海へ進出し、世界を取ったことから、中国も内陸国家としての性格を変えてまでも、海に出て覇権国家になろうとしています。

中国の海洋国家との戦争の歴史

今回は中国にとって重要な契機になった3つの戦争をご紹介します。

1840年にアヘン戦争→イギリスと清の戦争。アジアに一大拠点を築きたいイギリスの思惑によってアヘンを手段に開始しました。元々清は豊かな物資で輸入する必要がなかったことから、清を相手にうまい商売をするためには、清国民を麻薬中毒にする方法をとったという、これでアヘンの輸出を契機に中国市場を開放する狙いです。
もちろん国民を荒廃させるアヘンの輸入を禁止したい清はアヘン厳禁令を敷いてアヘンを廃棄。通商も禁止しました。これを機にイギリスは中国に進攻し、結果として清はイギリスに敗北、南京条約を締結して香港の割譲と5港の開港をしました。

ここからわかることは、香港は中国市場や東南アジアへのアクセス上において、地理的条件は香港は打ってつけなのです。

1894年に日清戦争。朝鮮半島を巡って8ヶ月に渡って繰り広げられた戦いで、当時新興国であった日本に敗れたことで本格的に列強に植民地化されるきっかけになりました。この戦争で日本の勝因としては、中国側の軍事力の問題や、そもそも日本をイギリスが支援したことも影響してます。日本を支援することでロシアの南下を食い止めたいという目論見があったとされてます。これによって下関条約が結ばれます。

そして2つの世界大戦を経て中華人民共和国は成立します。
中国成立前に、中国国内では孫文の結党した中国国民党と、毛沢東の共産党が成立し、共産党が勝つまで対立し続けています。互いに対外因子を排除する目的で「国共合作」という名目で共闘した歴史もあるが、孫文亡き後の蒋介石が共産党を敵視し、再び内戦が起こるが、結局共産党が勝利することになります。歴史は勝者が作るというのはその言葉通りですよね。

そして戦後に勃発した「朝鮮戦争」です。朝鮮戦争は朝鮮半島の北緯38度線を境に南はアメリカ、北側はソ連に占領され、1948年に大韓民国、北側は北朝鮮として独立します。独立後の1950年に戦争が開始されます。朝鮮戦争は半島を舞台とした米中戦争という様相になります。1953年に休戦協定が成立しますが、これはあくまで急戦であり、朝鮮戦争は定義上集結していないとされています。

韓国は今中国とアメリカで二股外交を続けている中、国際社会では主体性を発揮しているとは言えない状態と言えそうです。一方北朝鮮は、さらに危険度が増しています。
今の韓国の政権は南北統一を目指して北朝鮮に歩み寄っていますが、日本の立場としては、どんなきっかけで何をするかわからない北朝鮮は、ある意味東アジアで脅威とも言えるので、早く韓国によって民主化され、中国との間にある緩衝国が分厚くなるので、むしろ日本にとっては好都合と言えます。

ムジェイン頑張れと言えそうです。

そして最後に中国とベトナムの戦争、「中越国境戦争」です。あまりご存じない方も多いかもしれませんが、これは1979年にベトナムが、当時のカンボジアのポルポト政権を退けて親ベトナム政権を樹立させます。これに反発したのが中国。当時のポルポト毛沢東の考えに心酔し、共産主義革命を起こすことに力を入れていた中国寄りであったことから、中国はベトナムへけしかけます。ポルポト政権時代を考えると、倒されて大正解なのですが、中国はその尊厳を許容することができなかったのでしょう。

中越戦争を契機に、国境付近で戦争が起こり、この戦争については中国が勝利し、ベトナムの海に浮かぶスプラトリー諸島を実効支配します。

ベトナムと中国の対立は今でも緊張状態が続いています。

中国の海洋進出政策

中国は海洋進出に積極的ですが、ソ連が崩壊した後、中国は第一列島線、第二列島線という海洋軍事進出の目標ラインを定め、ここを取得して対米防衛ラインを確立すると明言しています。

第一防衛線は、中国の海域における軍事的防衛ラインの一つで、九州・沖縄から台湾・フィリピン・インドネシアの諸島群などを結ぶ線です。第一列島線の中には、現在もめている南シナ海の領有権問題があります。ここを取られてしまうと、日本の海上通路=シーレーンが一つ阻害されてしまいます。
シーレーンとは日本が石油の9割を依存する中東からインド洋を抜け、マラッカ海峡から南シナ海、日本へ通じる海洋ルートで、日本の経済安全保障上の生命線とされています。尖閣諸島も、シーレーンに含まれています。

第二列島線は、伊豆諸島、小笠原諸島、マリアナ諸島などを結んでニューギニア島に至るラインで、沖縄や台湾を結ぶ「第一列島線」よりもさらに中国から見て外側に位置しています。
そして最近では、「第3列島線」に関するものが散見されています。「第3列島線」とは、例えば、ハワイから南太平洋の島嶼国サモアを経由してニュージーランドに至る防衛ラインという記載が、海上自衛隊のサイトで紹介されています。

ここまで野心的な行動を起こしているのがわかっているにも関わらず、中国を優遇し、支援し続けた意図はどこにあるのでしょうか?

中国を思いとどまらせる必要性。日本のとるべき行動は?

今や野心を隠さず、武力で領有権を拡大させ、覇権国家として成り立とうとしている中国ですが、今や「不戦」が一般的な国際社会の秩序の中で、その常識が通用しない中国に対し、日本は同盟国と共にしっかり武装して備えなければいけないのではないでしょうか。

日本としては、地政学的リスクを考えると、南シナ海も我関せずということでは済まされません。個別的自衛権だけではなく、同盟国と集団で守り合う体制を築き、集団的自衛権の発動をできるように行い、領土拡大の野心を持つ中国を牽制しなければいけない。

戦争を回避する確率を1パーセントでも上げるためには、同盟国との関係強化を強固にしていくことでその戦争リスクの回避率は増します。

安保に反対する団体や政治家、マスコミなどは、一度地政学と中国の動きを見てからリアリズムに基づく賢明な行動や言動をすべきでしょう。

また、リーダーにいくら言ってもその国を変えるのは難しいとされます。
以前もご紹介しましたが、中国を変えるには中国国内の国民、世論を動かす必要があります。このまま共産党に追随する、今の共産党支配に疑念を持っている人々を動かし、その疑念を増やして国内情勢を混乱させることが必要かもしれません。

そして軍事については、いくら言葉で伝えても難しいと思うので、軍事力も抑えるために、どこかで中国政府と明確に対峙して大陸に進出することが直近で起こりうるかもしれません。これもやむを得ないでしょう。

日本にとって最大の脅威は中国に他なりません。
香港も取られ、次は尖閣か台湾か、南シナ海か、大きな独裁主義国家に対抗し、変革を求めていかなければいけないでしょう。