香港では、一部の市民は金融への監視とインターネット検閲に対抗するため、暗号資産(仮想通貨)と暗号メッセージングアプリを利用している人が増えているそうです。
6月30日に成立した香港国家安全維持法は、言論の自由の弾圧と香港の金融システムに対して、厳しい管理にまつわる恐怖を引き起こしており、新しい法律のもとで香港政府は、国家の安全を脅かす犯罪への関与が疑われる個人や組織の資産を凍結、没収することができる内容になっています。
ステーブルコインの利用が急増
データによると香港では、政府の管理対象である銀行システムから独立した方法で自らの資産を保有する方法として、ステーブルコインを利用するケースが増えているそうです。

取引プラットフォームのタイドビット(TideBit)での香港ドルとステーブルコイン「USDT」の取引高は6月上旬に急増しているとのことですが、取引の傾向は大口資産を保有する「くじら」と呼ばれる少数の投資家の影響も考えられるが、ステーブルコイン取引の急増は、資産を守りたいという香港市民の願いを表しているという見方があります。
「香港の警察と政府に国家の安全を脅かす犯罪者とみなされれば、資産を凍結され、没収される可能性さえある」香港市民は不安に怯えます。
英HSBCは2019年11月、デモ参加者が逮捕された仲間の保釈金を支払うために利用していた銀行口座を凍結しています。英銀HSBCホールディングスは、 中国の「香港国家安全維持法」施行を受け政治的緊張が高まっているにもかかわらず、富裕層・リテール顧客をさらに獲得するため中国への投資を拡大すると表明し、中国よりです。
ステーブルコインとは?
ステーブルコインは、安定した価格を実現するように設計された通貨です。ビットコインをはじめとする仮想通貨(暗号資産)は、ドルや円といった法定通貨と比較すると価格変動が激しくその実用性に課題があると一般的に言われています。法定通貨との交換比率を固定化することで、価格の安定化を目指している法定通貨担保型など、種類は様々です。
アジアにおけるステーブルコイン
「欧米の相対取引(証券取引所などの市場を通さずに、売り手と買い手が当事者同士で価格や売買数量などを決めて行う取引のこと)はビットコインとイーサリアムが80%、ステーブルコインが20%の割合とも言われていますが、アジアではテザー(Tether社が2015年2月から発行している、米ドルとペッグした暗号通貨)、USDC(米ドルに裏付けられたステーブルコイン)などがより多く取引されている」とされています。
より安全なコミュニケーション
金融資産の安全性に対する懸念に加えて、香港国家安全維持法はインターネット検閲と個人データに対する広範な監視の恐怖も生み出しています。
フェイスブック、グーグル、ズーム(Zoom)などの米大手テック企業は、香港当局への協力とユーザーデータの引き渡しを一時的に停止すると発表しており、香港政府は、香港国家安全維持法に違反する企業は従業員の投獄を含めた刑罰に処するとしています。
中国による管理強化への懸念は香港で高まり続けています。
暗号化メッセージングアプリ
さらに「WhatsApp(フェイスブックが提供するメッセージングアプリ)からSignal(暗号化メッセージングアプリ)へと移行し、ソーシャルメディアでの発言と、通信の安全性を確保することにより注意を払うようになっている」とされています。
ブロックチェーンベースのVPN
テクノロジーに詳しい人々は、中国のネット検閲システム「グレート・ファイアウォール」を超えてインターネット上でのアイデンティティを守ることができるVPN(virtual private network)を利用するだろうと分析しています。
香港のApp StoreでのVPNアプリのダウンロード数は、法律の成立発表後に急増しています。ゲームを除いて、最もダウンロードされたアプリのトップ10のうち7つはVPNアプリとなっており、国内のサービスは全て中国の検閲対象ということで利用できない状況です。
だが、中国のグレート・ファイアウォールはVPNサービスからのトラフィックを認識できるため、人々はユーザー情報の匿名化という、もう一つの手段を講じています。
ブロックチェーンベースのVPNシステムを提供するオーキッド(Orchid)のスティーブン・ウォーターハウス(Steven Waterhouse)CEOは、オーキッドはトラフィックを動画データと偽ることでユーザーのオンラインでの行動を分かりにくくでき、サービスの支払いに暗号資産を利用することはユーザーが自らの身を守ることに役立つと述べています。
参照:コインデスク